青い光に映しだされた 透明な檻の 向こう、足を止めて目を向ければ
叫ぶ獣人 伸びた爪 鋭い牙 髪は白く 肌はまだらで。
進みすぎた文明の犠牲者、哀れな動物。
濁った眼球、泥にまみれて、汚れてくすんだ身体に
所々残る傷跡、肌の継ぎ目のように。
潤んだ瞳に涙はなかった。緑青色の爪は不自然な輝き。
………哀れな。
呟いた私をその目が見据える。懇願の瞳、掠れた声。
そんな目で見るなと、言わんばかりに。
檻の中からまろび出た動物、崩れてゆく硝子片。わけが分からぬまま、腕を伸ばした。
硬い皮膚、すべやかな爪、見世物だった身体。
暗い回廊を走り出す。けたたましく鳴り響くサイレン、慌てた人の声。
左手には温かな感触、自分ではない、弾む息。
抱き上げた軽い身体、驚いた瞳。駆け抜けたその先は、荒野。
豹の少女…
その心だけが、人間の輝き。
哀れなる動物。抱き締めた肩は痩せていた。
涙を流せぬ身体だった。無邪気に振る舞う、傷だらけの心。
獣の少女。
いつか彼女を救えるだろうか、
いつか彼女を、愛せるだろうか。