決戦前夜 scene2:tifa
Final FantasyZ
昔は、楽しかったな…。
田舎っぽいけど平和な村で、仲の良い友達とパパとママと…ちょっとひねくれてたけど、今と変わらないクラウド。
変わらない日常を、変えようともしないで暮らしてた。
昔は───
膝を抱えて座り込み、夜の風景を無関心に目に映しながらティファは知らずくすりと笑みを浮かべた。
ちょっとひねくれてたクラウド…。それが今は、あんなになっちゃって…ウソみたい。
昔した約束が胸を掠める。
──ピンチの時は助けにきて──
忘れるわけない。もう、大分昔のことになるけれど、給水塔の上でクラウドと交わした約束。
今まで、それをずっと信じて来た。もちろんこれからだって信じていくつもり。
そう…クラウドなら、頼れるから。でも…
頬に浮かんだ笑みが消える。
不安げに曇った瞳で、ティファはふと飛空艇の窓から見える暗い空を仰ぎ見た。
赤い光に掻き消された星達の光。まるで血の色をした二つ目の太陽のように空に君臨するメテオ。
クラウドは一人で世界の重みを背負おうとしてる。たった一人で…セフィロスに立ち向かおうとしてる。
私と約束したように、エアリスとも約束したから?
この世界を救うって、約束したから?
ほんの僅か、瞳の片隅に嫉妬とも見える光が浮かんで消える。けれど、すぐに幼い少女のような感情は消え去った。
代わって哀しげに微笑み、ティファは目を閉じる。
…でも、一人なんて…辛すぎる。たった一人で──ううん。
一人でなんて行かせない。
私も行くんだ。クラウドと一緒に。
エアリスと約束したのはクラウドだけじゃないもの。
それに…私にも出来ることがある。
深い黒の瞳でじっと目の前の夜を見つめ、軽く拳を握り締める。
クラウドを支えるのは…私にしか出来ないこと…。
だから私も行く。セフィロスと決着をつけるために!
<< <戻> >>
|